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第2話:勇者はこうして創られる・12

「ぅおおぉおぉおぉわぁっ!?」
 
 トランポリンに思いきり沈み込んだ後、反動でポーンと宙に放り出されたかのように、気づけば俺は見覚えのある通学路に放り出されていた。
 
 全身汗だくになりながら、俺はアスファルトにへたり込み、自分の手足をおそるおそる確認していく。
 
(大丈夫……。手足がヘロヘロに伸びてたりとか、なってないな……)
 
「……ってか、俺……生きてる!?……むしろ何で生きてるんだ、アレで……」
 
 自分が生きていることが自分でも信じられない。それくらいの壮絶体験だった。
 
「おぉーい、高橋?何か奇妙な声出してなかったか?」
 
 俺の悲鳴に気づいたらしい新が角を曲がって現れる。
 その様子は異世界召喚前、俺と別れた時の姿そのままだった。
 
「……ん?どうしたんだ、お前。コケたのか?……にしては大ゲサな悲鳴だったな」
「……新、俺とお前が別れてから、どれくらい時間が経った?」
 
「はぁ!?そんなの計ってねぇけど。……でもまぁ、1分経ったか、経たないかくらいか?」
「……時間の進み方にズレがあんのか?それとも、今のは白昼夢……?」
 
 ぶつぶつ呟き、だが俺はすぐに白昼夢説を否定した。
 
 なぜなら俺の制服はあの広場で付いたと思しき土ボコリで汚れ、脇の下の辺りがちょっとほつれて破れ目ができていたからだ。
 
「夢じゃない……。でも、戻って来ちまったんだな……」
 
 あんな目に遭わされたというのに、頭に浮かぶのはフローラの超絶美麗眉毛の面影ばかりだった。
 
「えっと、高橋?マジでどうしたんだ?」
 
 道路の上に四つんばいになったまま遠い目で何か呟いている俺を、新が『コイツ、どうかしちまったんじゃないのか?』と本気で心配そうな顔で見つめてくる。
 
「……なぁ、新。俺がお前と別れてたこの数十秒の間に、異世界に召喚されて戻って来たんだって言ったら、お前、信じる?」
 
 新は俺のその問いに、しばらくの間黙り込んで何か考えているようだった。
 
「……小学校以来の親友のお前の言うことだから、信じてやりたいのは山々なんだが……俺、自分の目で見たモンしか信じない性質なんだわ」
 
 真顔でそう答えてくる親友に『あぁ、コイツってそういうヤツだよな』と心の中で呟きながら、俺は再びあの世界へ思いを馳せる。
 
(もう、あの世界へは行けないんだろうか?もう、あの美しい眉毛には会えないのか?……フローラ……)
 
 もう二度とフローラに会えないかも知れないと、俺はセンチメンタルな気分に沈んでいた。
 
 ……『もう二度と無いかも』と思っていたその“再会”は、この後意外なほど早く訪れることになるのだが、この時の俺は、まだそれを知らない。

☆☆☆

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このページは津籠睦月による異世界召喚ファンタジー小説「ブラックホール・プリンセス」
シンプル・レイアウト版第2話その12です。
用語解説フレーム付きバージョンはもっと先までストーリーが進んでいますが、
シンプル・レイアウト版は後から制作しているため、ストーリーが遅れています。
 
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