言ノ葉ノ森TOP>INDEX(もくじ)>シンプルINDEX>第3話(イマココ)
――猫はいいよなぁ。一日中ゴロゴロ寝てればいいんだから。
……昔の俺は、ご近所のニャンコたちを眺めながら、そんな風に思っていた。
しかし、今は違う。
あのネコたちにだって、きっといろんな苦労があるはずだ。
端から見ているだけでは分からない、当事者にならなければ知ることのできない苦労というヤツが……。
これは、そのままフツーに“ただの人間”をやっていれば知るはずもなかったそんな
それは俺が生まれて初めて異世界に召喚され、超絶美麗眉毛の美姫・フローラと出逢い、思いがけないハプニングで地球に帰還した、その夜のことだった。
制服を汚してしまい、お袋に軽くキレられた俺は、罰として大量の皿洗いをさせられ、その後、風呂に入ってやっと人心地ついたところだった。
(あ〜ぁ……せっかく異世界召喚を体験できたってのに、一日も経たないでこっちに戻って来るなんてアリかよ……。もったいな……)
この時点では、再び召喚されるかどうかなどサッパリ分からず、俺はかなりメランコリックな気分に沈んでいた。
(フローラ……。すっっっごい理想的な形の眉毛だったよな……。せめて動画……いや、静止画でもいいから保存できていれば……)
もう今さらどうにもならないことばかり考えながら、俺はシャワーの蛇口をひねる。
いつものように熱い湯を頭から浴びようとして……俺はすぐに異変に気づいた。
普通ならシャワーヘッドから真っ直ぐ落ちてくるはずの湯が、途中でぐにゃりと横向きに曲がり、俺の後方へと流れていく。
思わず水滴の行方を追うように後ろを振り返り、俺はそこにあまりにも見覚えのある