言ノ葉ノ森TOP>INDEX(もくじ)>シンプルINDEX>第3話(イマココ)
「それにしてもぉ……やっぱり人外の姿に変身してしまったのですねぇ……。きっかけは何でしたぁ……?クシャミとかアクビとかしましたかぁ?」
「『やっぱり』って何だ!?『やっぱり』って!あんた、俺がこんななった理由が分かるのか!?」
不敬罪という言葉にビビり、一応『お前』を『あんた』に改めながら、俺は問う。
「はいぃ……。まぁ、推測ではありますがぁ……。先日私がぁ、命聖玉を用いてぇ、あなたの言葉が通じるようにした際ぃ、ちょっとイレギュラーな事態が発生してしまったようでぇ……」
リィサは悪びれた様子もすまなさそうな表情も一切見せず言葉を続ける。
「私もぉ……後であなたの生体情報を確認していた時にぃ、やっと気づいたのですがぁ……異世界人に命聖玉を使用したせいなのかぁ……あなたの遺伝情報や体組織はぁ、今とっても不安定な状態にあってぇ……ふとしたきっかけで変質したり組み変わったりしてしまうようなのですぅ……」
「は!?何だソレ!?そんなのあり得んのかよ!?ってか、何でそれで猫になるんだ!?」
「人体にはぁ、現代でもまだ解明されていない神秘がぁ、いろいろあるものですぅ。たとえばヒトとチンパンジーのDNAにはぁ、たった1.6%の違いしか無いのですぅ。グダグダになったぁ、あなたのDNAや体組織が何割かでも変化すればぁ、人間以外の何かになってしまったとしてもぉ不思議はないのですぅ。猫さんになったのはぁ……………………なぜでしょうねぇぇ?私の趣味が影響したとかぁ、ですかねぇ?」
「いや、何言ってんのかさっぱ意味不明なんだが、つまり原因はあんたってことだな!?」
「私のせいじゃないですぅ。私はただ頼まれてぇ、親切心からあなたの言葉が通じるようにしてあげただけですのにぃ……。ヒドいですぅ」
わざとらしい泣き真似にイラッとしたが、ここで責めてまた不敬罪など持ち出されてはたまったものではない。
「……で、あんたなら俺を元に戻すことができんのか?」
「えっとぉ……」
リィサは服の中からゴソゴソと例の鍵の形のペンダントを取り出し、俺の頭上にかざして、しばらく無言になった。
「……どうやら、クシャミをすれば元に戻るようですぅ。と言うか、クシャミをするたびに猫さんの姿と人間の姿と入れ替わるようですぅ。面白い体質になりましたねぇぇ……」
「いや、面白がんなよ!?あんたのせい……あ、いや。……と、とにかく、クシャミすれば人間には戻れるんだな!?」
「はいぃ。でも、よろしいんですかぁ?あなた、今、全裸のようですけどぉ……。お洋服、どうされたんですかぁ?」
茶トラ模様の毛皮以外は一糸まとわぬ俺にリィサが指摘してくる。
(そ、そうだったぁー!今人間に戻ったら、確実にマズいことになる!何とか服を調達しないと!)